プラットフォーム上の著作権その他の権利侵害について

Posted by Hideto Nakai on 2022/06/05

1 はじめに

コンテンツ配信型プラットフォームやSNS型プラットフォーム上で、著作権その他の権利(以下「著作権等」といいます。)の侵害が行われた場面では、権利者及び利用者(侵害者)のほか、利用者に投稿・配信等の場を提供するプラットフォームの運営者(以下「運営者」といいます。)が存在します。そのため、権利者としては、侵害された権利の回復のために、運営者に対して、以下の方法を執ることが考えられます。

①削除請求

②(利用者に対して削除請求及び損害賠償請求を行う前提としての)発信者情報開示請求

以下、上記の各方法に対して運営者の執るべき措置について述べます。

2 削除請求について

権利者としては、運営者に対し、権利者の著作権等を侵害しているコンテンツ、投稿その他の情報(以下「侵害情報」といいます。)の削除を求めます(注1)。

これに対し、運営者としては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」といいます。)3条1項(注:権利者に対する免責事由)、2項(注:発信者に対する免責事由)及び利用約款に定める免責事由を考慮して対応することとなります。すなわち、運営者は、通常、利用約款に基づいて、利用者に対して削除に関する意向を照会し、照会日から7日以内に削除を拒否する旨の通知を受けなかった場合には、侵害情報を削除し(法3条2項2号参照)、上記の通知を受けた場合には、権利者から提供された情報に基づいて、適切に削除の可否を判断することとなります(法3条2項1号参照)。仮に、運営者が、侵害情報の流通によって権利者の著作権等が侵害されていることを知ることができたのに削除しなかった場合には、運営者に対する損害賠償請求が認められることがあります(法3条1項2号。注2)。

なお、利用約款は利用者以外の第三者には効力がないことから、運営者は、利用者でない被害者に対して、利用約款上の免責事由を主張することはできません(注3)。また、利用者が消費者の場合、損害の全部を対象とする免責事由は、無効と解されるおそれがあります(消費者契約法8条1項。注4)。

3 発信者情報開示請求について

運営者が上記の削除請求に応ぜず、かつ、特に匿名で配信・投稿がなされている場合、権利者は、利用者を特定するために(注5)、運営者に対して、発信者情報の開示を請求します(法4条1項参照)。

これに対し、運営者は、利用者に対して開示に関する意向を照会し(法4条2項参照)、開示に同意する旨の通知を受けなかった場合には、権利者から提供された情報に基づいて、適切に開示の可否を判断することとなります(法4条4項参照)。

運営者が上記の開示請求に応じなかった場合、権利者は、運営者を債務者として、法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づいて、発信者情報の開示を求める仮処分命令を申し立てます(注6)。

これに対し、運営者は、権利者から提供された情報に基づいて、争うこととなります。


(注1)現在、総務省支援事業として、違法・有害情報相談センターが、運営者への削除依頼の方法等に関する相談に応じています。

(注2)知財高裁平成22年9月8日判決・判例タイムズ1389号324頁(著作権・肯定)、知財高裁平成24年2月14日判決・判例タイムズ1404号217頁(商標権・肯定)、仙台地裁平成30年7月9日判決・判例秘書L07350694(人格権・肯定)、大阪地裁令和2年9月18日判決・判例タイムズ1495号212頁(人格権・否定)参照。

(注3)岡田淳ら編著「プラットフォームビジネスの法務第2版」119頁参照。

(注4)東京高裁令和2年11月5日判決・判例秘書L07520403参照。

(注5)特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律を改正する法律(令和3年法律第27号)(令和4年10月1日施行)により、一定の要件の下、ログイン時のIPアドレス等の特定発信者情報が、開示の対象となりました。また、上記の改正法により、①開示命令,②提供命令及び③消去禁止命令を柱とする新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。

(注6)プロバイダ責任制限法は、「情報の流通」自体によって権利侵害が生じた場合のみを対象とするため、例えば、オンラインショッピングモール上の商品紹介ページに虚偽情報があった場合には、開示請求の根拠として利用できないことに留意が必要です。前掲注3)300頁参照。