Q2-2 弁護士資格を有しないA氏に、自賠責保険に対する被害者請求を依頼しました。報酬金は、私がB保険会社と契約している自動車保険の弁護士費用等特約を使うことを前提に、着手金10万円及び自賠責保険金支払額の20%としました。その後、自賠責保険からは、後遺障害等級14級が認定されて、75万円が支払われました。しかし、B保険会社は、3万円しか保険金を支払いませんでした。A氏は、私に残額を支払うよう求めていますが、支払わないといけませんか?
A2-2 支払わなくてもよい場合があります。
弁護士法72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件等のほか「その他一般の法律事務」に関して法律事務を取り扱うこと等を禁止しています。「その他一般の法律事件」の意味については争いがありますが、最高裁は、「法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」がこれに当たる旨判示しています(最高裁平成22年7月20日決定・判例タイムズ1333号115頁参照)。そして、一般に、自賠責保険の被害者請求において請求可能な損害賠償額は、被害者の傷害の内容・程度、通院状況・期間、後遺障害の内容・程度その他の損害状況のほか、被害者の過失の有無・程度等によっても異なるものです。そのため、被害者請求に関する事務は、法律上の権利義務関係について紛争に発展する可能性のある事項を数多く含むものと解されます。
よって、事案の内容によっては、A氏との委任契約が、弁護士法72条に違反して、公序良俗(民法90条)に反して無効となることもあります(大阪地裁令和2年6月26日判決・自保ジャーナル2078号152頁参照)。