著作者の意に反する改変(著作権法20条1項)について

Posted by Hideto Nakai on 2026/03/01

1 はじめに

著作者の「意に反して」行われる改変(著作権法20条1項。以下「意に反する改変」といいます。)の解釈については、①著作者の主観的判断に委ねられると解する立場と、②著作者の精神的・人格的利益を害しない程度の改変は許されるなどと客観的に解する立場とに大別されますが(注1)、立法者意思及び文言解釈上、基本的には上記①の立場が妥当と解されます。ただし、著作者の「こだわり」を過度に重視することは、著作物の有効な利用を妨げる結果となります。実際、多くの裁判では、事実認定の段階で客観面との調整が図られています。

以下、裁判例を分析した上で、「意に反する改変」の限界について検討します。

2 裁判例の分析

結論として、著作者人格権の侵害を認定したもの4例(2、6、7及び10)、否認したもの6例(1、3、4、5、8及び9)の合計10の裁判例を分析しました。(詳細は、別紙「著作者の意に反する改変(著作権法20条1項)に関する裁判例」参照)。これらの判断理由に着目すると、以下のとおり、一定の傾向が確認できます。

⑴黙示の承諾

著作者による明示の同意がない場合に、黙示の同意を認定した裁判例があります(3、5、8及び9)。

⑵承諾の範囲の画定

著作物の利用に関して何らかの交渉があった場合に、著作物の改変についての承諾を認めた裁判例があります(1)。他方で、著作者の承諾した範囲を厳格に解して、その存在を否認した裁判例があります(2、6、7及び10)。

⑶その他

やや特殊な事例として、俳句会における事実たる慣習の存在を積極的に認定した裁判例があります(4)。

3 検討

検討対象の裁判例のうち、著作者人格権の侵害を認定したものは、すべて著作者の承諾した範囲を厳格に解して、その存在を否認しています。これは、承諾という意思表示の解釈に当たり、まずは著作者の承諾の対象を特定することが重要であることを示唆しています。

他方で、著作者人格権の侵害を否認したものの多くは、著作者の黙示の承諾を認定しています。黙示の承諾については、「改変に先立って当事者間で契約締結等の折衝行為がある場合には(中略)著作物の改変の目的及び態様や慣行に照らして、改変が著作者の意に反するか否かを総合的に認定するのに代替することができる」と評価されており(注2)、著作者の主観面を客観的に捉える手法として、妥当なものと考えられます。


注1)小倉秀夫=金井重彦編著「著作権法コンメンタール[改訂版]Ⅰ」479頁参照

注2)高林龍著「標準著作権法第6版」257頁参照