A-フリーランスQ1-1

Q1-1 当社は、駆け出しのユーチューバーAとマネジメントに関する業務委託契約を締結した上で、Aに対してノウハウを提供し、その配信する動画の登録者数と再生回数が増加することにより、お互いの収益を増加させたいと思います。当社としては、最低3年間は契約関係を継続しなければ、ノウハウ提供に見合う収益を上げられません。そのため、契約上、①契約期間は契約締結日から3年間とし、②各当事者は、契約期間内であっても、合意により解除することができると定めました。この場合、Aは、契約期間内に一方的に契約を解除できますか?

A1-1 Aは、契約期間内においても、任意に契約を解除できます。 
   まず、本件の業務委託契約は、委任者をA、受任者を御社とする準委任契約であると解されます。そして、準委任契約については、当事者間の信頼関係を基礎とする契約であることに鑑み、各当事者はいつでもその解除をすることができる旨定められているところ(民法656条が準用する651条)、委任者は、明らかに解除権を放棄したと認められる特段の事情がない限り、委任契約の解除をすることができるものと解されています。
   本件において、Aが「明らかに解除権を放棄したと認められる特段の事情」が認められるかどうかを検討すると、御社の意図としては、上記②の定めにより、各当事者が契約期間内の任意解除権(民法656条が準用する651条参照)を放棄するものであったかもしれません。しかしながら、上記②の定めは、単に契約期間内において合意解除できることが定められたというのが、文言上の素直な解釈です。したがって、上記の特段の事情は認められないこととなります。
   上記の特段の事情が認められるためには、少なくとも、定型書式に付記した特記事項として、各当事者が契約期間内の任意解除権を放棄することが明記されることが必要です。それに加えて、契約締結に先立って、御社からAに対して、最低3年間は契約関係を継続する必要があることを十分に説明して、Aの同意を得ておくことが望ましいです(東京地裁令和6年7月8日判決・判例タイムズ1531号247頁参照)。