A-労働Q3-3

Q3-3 私は、A社と労働契約を締結し、同社から、「期間の定めなし」と記載された労働条件通知書を受領しました。入社してから2週間後、私は、A社から、再度、労働条件通知書を手渡された上で、「内容を確認して、問題がなければ署名押印して提出してください。」と言われました。私は、この書面に「期間の定めあり(令和3年○月○日から令和4年○月○日まで)」と記載されていることを確認しましたが、これに署名押印して提出しました。これにより、A社との労働契約は、期間の定めのないものから、期間の定めのあるものへと変更されたのでしょうか?

A3-3 変更されていないものと考えられます。
期間の定めのない労働契約と期間の定めのある労働契約とでは、雇用継続の蓋然性が大きく異なることから、期間の定めの有無は重要な労働条件であるといえます。そして、このような重要な労働条件を労働者に不利益に変更することを内容とする同意の有無については、単に労働者においてその変更を同意したというだけでなく、
①当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、
②労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、
③当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等
に照らして、「当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か」という観点からも判断されるべきと考えられます(最高裁平成28年2月19日判決・山梨県民信用組合事件・労働判例1136号6頁)。
ご相談につきましては、まず、当初の労働条件通知書を受領した時点で、相談者とA社との間で期間の定めのない労働契約が成立しているものと考えられます。そして、再度の労働条件通知書の交付を受けて、同書面に署名押印をした上で、A社に同書面を提出したことにより、上記の労働契約を期間の定めがあるものに変更することを同意したかどうかが問題となります。この点、A社は、相談者に対して、上記の変更についての説明が十分になされていないように思われます。したがって、相談者とA社との間の雇用契約は、期間の定めのあるものに変更されておらず、期間の定めがない労働契約のままであると考えられます(名古屋地裁令和2年1月12日判決・判例タイムズ1485号189頁参照)。