A-労働Q4-1

Q4-1  技術者として、A社(派遣元)と雇用契約を締結して、B社(派遣先)に常駐して開発業務を行うことになりました。A社から示された就業条件では、労働時間は平日の午前9時から午後6時(休憩1時間)で、残業と休日労働は少し程度とのことでした。ところが、B社で作業を開始すると、労働時間は午前10時から午後7時(休憩1時間)で、連日、深夜近くまでの残業があり、休日労働も多いことが分かりました。A社の担当者に対して苦情を申し入れたところ、同担当者は、「(B社との関係は)準委任契約だから。」と答えました。これは、どういう意味でしょうか?また、法律上、問題はありませんか?

A4-1 A社の担当者の回答の趣旨は、おそらくA社とB社との関係が、業務処理請負なので、A社から相談者に示された就業条件は、B社には適用されないという趣旨でないかと思われます。仮に、そうであるとすると、実態は「労働者派遣」であるが、A社とB社との間で「請負契約」の形式がとられていること(偽装請負)となり、労働者派遣法違反の問題が生じてきます。
派遣先事業者は、労働者派遣法上、①派遣先に雇用される労働者に対して行う教育訓練を実施する等必要な措置を講じる義務(40条2項)、②派遣先の通常の労働者の待遇に関する情報を派遣元事業主に提供する義務(26条7項・10項)、③派遣労働者を受け入れている事業所で労働者の募集を行うときには、当該募集に係る事項を当該派遣労働者に周知する義務(40条5項)等を負っています。また、派遣先事業者は、派遣労働者に対して実際に指揮命令を行なっていることから、セクハラ防止措置義務(労働基準法11条1項)等の法令上の責任や、働きやすい良好な職場環境を維持する義務(職場環境配慮義務)に違反した場合の損害賠償責任(民法415条、709条)等を負っています。A社とB社との関係で「請負契約」の形式がとられていることは、B社におけるこれらの責任の有無が曖昧となる点で、問題があるといえます。