A-労働Q4-2

Q4-2 私は、A社と雇用契約を締結して、B社に常駐して、B社の従業員の指揮命令の下、プログラムの開発業務の一部を担当しています。A社とB社の間では、開発業務の請負契約が締結されているようですが、これは違法派遣(偽装請負)ではないでしょうか?仮に、違法派遣の場合、私は、B社に対して、労働者派遣法40条の6に基づく労働契約の申込みを承諾することで、B社との間に労働契約を締結することができるのでしょうか?

A4-2 直ちにそのようにはいえません。
まず、労働者派遣と業務処理請負との区別は、厚生労働省の告示である「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号。以下「区分基準告示」といいます。)により行われます。その結果、A社とB社の間の契約が労働者派遣と判断された場合には、違法派遣となり、B社は、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣法26条1項各号に掲げる事項を定めず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(同法40条の6第1項本文、5号)に当たります。
   しかし、区分基準告示の解釈は困難であることから、労働者派遣法40条の6第1項5号は、同号の成立に、派遣先(発注者)において労働者派遣法等の規定の適用を「免れる目的」があることを要するものとしています。そして、一般に、作業者に対する指揮命令と業務委託・請負における注文者の指図との区別は困難な場合があることから、少なくともB社に、過去に労働基準監督署ないし労働局から個別の指導を受けたこともなかった場合には、B社において、「免れる目的」があったと認めることは困難な場合が多いと考えられます(東京地裁令和2年6月11日判決・労働判例1233号26頁参照)。

【追記】
大阪高裁令和3年11月4日判決・労働判例1253号60頁は、「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当」との一般論を述べた上で、本件において、被控訴人に偽装請負等の目的(労働者派遣法40条の6第1項5号の「免れる目的」)があったことを認めました。