ツイートの適法引用について

Posted by Hideto Nakai on 2023/02/28

1 はじめに

他人の著作物の適法引用(著作権法32条1項)の基準については、法文上の要件である「公正な慣行」と「正当な範囲内」の解釈・適用として、①利用の目的、②その方法や態様、③利用される著作物の種類や性質、④著作権者に及ぼす影響の有無・程度等に該当する事実等を考慮して、総合的に判断するのが、裁判例の傾向です(注1)。

この点、近年、問題となることが多いツイートの適法引用に関しては、確立した慣行がなく、かつ、引用の仕方も様々であることから、判断も分かれています。

以下、ツイートの適法引用が争点となった、近時の裁判例を整理して(注2)、検討したいと思います([]の番号は、注2)記載のURLに掲載された一覧表のものです。)。


2 裁判例の整理

引用の方法としては、他人のツイート(プロフィール画像を含む。)のスクリーンショットを添付してツイートする方法([1][[2][3][6]。以下「スクリーンショット型」といいます。注3)が多く、その他にイラストを添付したツイートの方法([4][5])や書籍への他人のツイートの全文引用([7]があります。

スクリーンショト型では、適法引用の肯定・否定の判断が分かれています(肯定例:[1][3],否定例:[2][6])。これは、ツイッターの規約上定められた引用リツイートの方法によらないことの評価や、主従関係性をどの程度重視するかによって、判断が分かれたものと考えられます。なお、スクリーンショット型では、知財高裁令和4年11月2日判決([3])以降、引用リツイートの方法によらなかったことを理由として、適法引用を否定した裁判例は見当たりませんでした。

イラストを添付したツイートの方法では、原審と控訴審とで判断が分かれています。構図の異なるイラストを添付する必要性についての評価の相違が原因と考えられます。

書籍への他人のツイートの全文引用では、適法引用が肯定されています。これは、短文というツイートの性質上、全文引用の必要性が認められやすかったと考えられます。


3 考察

⑴否定例である東京地裁令和12月14日判決([2])は、スクリーンショット中のプロフィール画像ではなく、本文の著作権侵害が問題とされた点に事案の特徴があるところ、主従関係性を重視したものと考えられます。この点、東京地裁令和3年12月10日判決([6])と共通するところがあります。

⑵書籍への他人のツイートの全文引用での肯定例である、東京地裁令和3年5月26日判決([7])では、本件ツイートに係る記載部分は見開き2頁のうちの左頁上段の5行(本文部分は3行)にすぎず、形式的にも内容的にも、被告Yのコメントが主であり、原告の本件ツイートが従と認められる事案でした。

⑶上記⑴及び⑵から、ツイッターの全文引用によって本文の著作権侵害が問題となる場合には、裁判例は、適法引用について、主従関係性を重視して判断する傾向にあると考えられます。


(注1)「適法引用(著作権法32条1項)の判断枠組みについて」参照

(注2)裁判例一覧表(注:クリックすると開きます。)

(注3)スクリーンショット型には、スクリーンショット中のプロフィール画像の著作権侵害性が問題となったもの([1][3])と、本文(テキスト)の著作権侵害性が問題となったもの([2][6])とがあります。